【徒然文献調査】フィナステリドで治療された患者における自殺傾向と心理的有害事象の調査

2020年11月にフィナステリドで治療された患者における自殺傾向と心理的有害事象の調査「Investigation of Suicidality and Psychological Adverse Events in Patients Treated With Finasteride」が発表されていました。

→ https://jamanetwork.com/journals/jamadermatology/fullarticle/2772818

フィナステリドといえば、男性壮年期脱毛症の治療で、「自由診療」として処方されるお薬です。先発品名は「プロペシア」ですね。電車やネットの広告でよく出てくるので、毛が生える錠剤といえばフィナステリドがほとんどでしょう。まれに、国内では塗るタイプしかないミノキシジルも海外製の飲み薬として広告されていたり、自費診療のオプションとして広告されていることもあります。

そんなフィナステリドは毛生え薬としてたしかに優秀なのですが、その副作用として、フィナステリド症候群もあるのではないか?という問題提起がなされています。一般的に知られている性欲減退やEDといった副作用だけではなく、希死念慮(死にたいと思う気持ちが強くなる)や自殺を若年層では統計的に増えているような報告もあります。

今回の文献は、フィナステリド使用者3,026人(18~44歳)のうち、フィナステリドの自殺傾向(ROR、1.63; 95% CI、1.47-1.81)および鬱傾向などの心理的有害事象(ROR、4.33; 95% CI、4.17-4.49)の有意な不均衡シグナルが特定されました。RORとは、報告オッズ比と呼ばれ、1を超えるとたぶん関係がありそうだ、という指標を統計的に算出することができる値です。95% CIは95%信頼区間とよばれ、95%の確率でその区間の数字に当てはまるというものです。心理的有害事象のRORは4.33、自殺傾向は1.63のため、自殺傾向は当然ながら心理的有害事象よりも低いことがわかります。

この報告から、すぐに副作用があるから服用を中断すべきということまでは読み取れません。あくまでも、ほかの医薬品と比べてシグナルの強度が高いという結果が浮かび上がっただけであり、服用者と医療従事者がフォローしておいた方がよいこととして、心理的な状況の情報共有が必要というレベルです。

また、良性前立腺肥大の方や高齢の方に関しては、シグナルは検出されず、そちらの治療で使う分にはまだフォローすべき症状ではないでしょう。

フィナステリドは個人輸入や自費診療で、実は服用しているというケースも現場でままあるため、追加の薬学的なフォローを行う際、45歳未満の男性に関しては、心理的な状況のヒアリングも追加してもよいという考え方を外挿しうる文献でした。

気になることがございましたら、薬局ガレリアまでお気軽にお問い合わせください。

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