個展 欲望の痕/Traces of Desire

中国の宋代(960年 – 1279年)から文人たちは山水画を自由に筆致し、山や水の様子を描くことだけではなく、自分の気持ちや思想、世界観を表現した。それは「文人山水画(=文人画)」と呼ばれ、特徴的には筆技を重視し、「人生は修行だ」の思想も含めている水墨山水画だ。そして、明代(1368年 – 1644年)の画家・批評家である董其昌は、水墨画の職業画家を技法のみに拘泥するものと批判し、文人作家の内面性・精神性が表現されている絵画を文人画として高く評価した。その後、文人画が最も代表的な伝統的様式として成立した。

文人山水画で一番重要なのは、山や水の様子を描くことではなく、自分の気持ちや思想、世界観を表現することだ。私は文人山水画で得た「『空』と『破』」という方法論を応用して、現代美術として新しい作品を創作している。

文人山水画における「空」は、墨がのらない空白の意味で、作品で現したもの以外、つまり観客が自分の経験によって連想したもの、想像の余白を示す。それに対して「破」は、一つの描き方に固執せずに一つ前の描き方を壊すことの意味で、既存の関係性や枠組みを壊してものの新しい可能性を探すこと、矛盾、不合理、混沌を示す。この文脈を踏まえて、私は「世の中にあるものを再現するのではなく、自らものに対する考えや発想を作品でモノを創出する」という創作概念で活動をしている。

「人間は欲望があるから生きたい。生きたいというような気持ちがあるからこそ行動する。」作品「欲望の痕」を創作したきっかけは生命の本質への思考だ。人間を生きる本質は様々な思いの混ざり合いの間で起こる新たな変化と考え、写真、映像、自問自答などの手法で自分の痕を表現した。

個展風景

【薬局長コメント】

東京藝術大学院の学生の方の個展です。一番最初にお問い合わせいただき、ポートフォリオを見せてもらったとき、現代美術の洗礼を浴びました。どうやって対話できるんだろう、、、?と戸惑いを感じながら、それでも惹きつける問いかけの強さに、何度も時間をかけてみたくなる作品たちです。

白いタイツの人物は作家のMIMIKO氏です。人間、動物、AIの三面神を表しているのでしょうか(MIMIKO氏のポートフォリオ集は薬局で閲覧できます)。

MIMIKO氏の公式HPはこちら → https://mimikoan.com/work

水墨画の概念から繋がった、新しい表現、問いかけは一見不審者徘徊に見えつつも、善や悪がまどろむ、流れてる私を存在として認識する、しているのか?という自問自答に誘ってくれます。

まったくの初心者の薬局長は、普通の人間なので、作品にいちいち意味を求めてしまいますが、MIMIKO氏の個展「欲望の痕」においては、移ろいゆく私にいちいち意味付けをするのではなく、そのまま見た感じを楽しむことにとても困惑を感じつつ、新たな概念を迎えられた喜びも感じています。

作家のポートフォリオ集や、スケッチブックも閲覧できるため、過去から今に至るまでの変遷も丁寧に知ることができます。

薬局ガレリアの個展イベント第一弾として、いろんな段階をすっ飛ばしたような気もしなくはないですが、ただただ衝撃を受けて、なんだこれは、、、!となれる、現代美術へのいざないを地域の方へ還元できるものとして信じて、個展を開催しております。

2022年11月16日から2022年12月10日まで開催しておりますので、ぜひ地域の皆さまにもお気軽に触れてみてほしいです。

なお、2023年2月にも個展を開催する予定です。まだ空きは十分にございますので、気になる方はぜひ、お問い合わせください。

【作家様】薬局待合に展示する作品を募集しています

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